語ることの大切さと、その恥ずかしさ

語ることの大切さと、その恥ずかしさ
4月29日にトビタテcaféという留学相談会を開きました。今回で3回目、累計100人近い学生の留学計画ブラッシュアップを手伝っています。そこで何を伝えているのか、そしてそこで何を感じているのかを書いていこうと思います。

経緯

トビタテcaféを始めた経緯はシンプルです。それは適当な夢をうまく並べ立てて受かる人がいるのに、本当は情熱があるのにそれを伝えられない人がトビタテに落ちてしまうのは勿体無い! と思ったからです。

この人なら絶対受かるだろうと思っていた人が落ちることが時々ありました。もちろん審査する方との相性もあるのでしょうが、その理由はもしかしたら自分の持っている面白さを「相手に伝える力」にあるのではないかと考えました。

それじゃあ、哲学という最もこういう奨学金のウケが悪い專門を研究している自分が3回も給付奨学金を受け取って留学出来たことにその秘密が隠れているのではないか…と考え、その秘密(というか技術)を伝えられたならと思ったのがcaféの始まりです。

伝えていること

伝えているメソッドは単純です。それは、「人生を物語のように考えてみよう」ということ。物語の主人公は、最初と最後で必ず変化を生んでいます。山あり谷あり、伏線が後から繋がったりして読んでいて面白い話になります。過去-今-未来の3点が繋がっているということです。

今後少しずつ具体的に言語化していきますが、イメージとしては以下のような感じです。

1.昔から小説を読んだり書いたりするのが好きな少年が
2.ある時、家族と一緒に海外旅行をした
3.そこで自分と同年代の乞食を見た

とすると、4はどんなものになると思いますか? どんなエピソードが待っていると思いますか? 僕はですね、これ絶対「社会問題を小説として描く」ような気がするんですよ。

なんなら、今度は海外旅行じゃなくてスタディーツアーに行くし、日本にいる間にストリートチルドレンについての本を読むと思うんです。もし受験を控えた高校生だったら、大学の学部選択は経済とかにするんじゃないですか?

もしかしたら、本を書いても世界は変わらねえ! とボランティアやNPOに入るかもしれません。

そういうものじゃないですか? さっきの1-3のエピソードは実話です。でも、そんな彼は「いま、これから、何をしたらいいのかわからないんです」と相談をしてきたんです。

(自分が何かを伝えるというよりは、参加者が言っていることを出来るだけ誠実に言語化しようとしているファシリテーター)

傍から見たら、こんなにわかりやすい物語は無いのに! 先ほど書いたことを伝えると「ああ、確かに! とりあえず本を読んだり、NPOの活動を見に行ってみます!」と納得した様子でした。読んでみて、行ってみて、思っていたのと違って失望するならそれもそれで良いですよね。失敗も良いエピソードになる気がします。

つまり僕がこのcaféで伝えていることは以下の3点です。
1.今までの人生の「エピソード」を聞くこと
2.今までの「エピソード」から必然的に繋がる未来(妄想)を聞くこと
3.その未来に繋がるために「いま、これから」起きる「エピソード」(妄想)を聞くこと

そして、この3の中に留学があるのなら、留学したら良いと思うんです。むしろ、必然的に「ああそうだよね、そんな過去があって、やりたい未来があるのなら、その間にこの国でこんなことをやる留学って必然的に必要だよね」という風に。

これは就活も同じです。自分の人生を振り返り、なりたい自分を想像した時に、どんな会社に入ったらそれが叶うのか。それを必然的に説明出来たら、人事の方に対して魅力的に自分を紹介出来るはずです。

逆に、そこに留学が入ってこなくてもよいのなら、「別に留学しなくてもいいんじゃない」と素直に伝えています。僕は留学を勧める仕事をしているわけではないので、それをきちんと伝えることがフェアだと感じるからです。

口だけおじさん

また、夢を語ってくれた後に「それで、今は何をしているの?」と問うと答えに詰まる人がいました。僕はそれを「口だけおじさん」と呼んでいます。大きいことを言うだけではなく、そのために積み重ねる今のエピソードがあるはずじゃないかと。

お姫様が誘拐されて彼女を助けに行く主人公が、物語の途中30Pくらい学校と家の往復をして家で毎日ゴロゴロしながらyoutubeを見ていますか? そんな登場人物は格好いいですか? お姫様救出作戦が成功しますか、ということです。

海外の貧困に取り組みたいけれど、今何をしたらいいかわからない。そんな人には、自分を主人公に置き換えて見て欲しい。貧困問題を解決する人って、きっと途中何回も挫折しそうですよね。

現実の厳しさを知ったり、興味の無い人を巻き込むことの難しさに苦しんだり(未来の自分)。ところで、その登場人物がもし「広告」が好き(今までの自分)だとしましょう。その人いま、これから、どんなことしますかね。

国際系NPOの広告の仕方を知るためにインターン行ったり、人にどんな印象を与えたらその問題に関心を持ってもらえるかを勉強したりするような気がします。そして、これが伏線になって後で役立ったりするんですよ。そういうことってありそうでしょう。

自分の情熱を語ること

これは、僕自身も中々相手が見つからなかったので大変でしたが、本当にとても大切なことだと思います。情熱的に語る時、必ずその人は「なんで僕/私はこれを解決したいのか」「自分は昔こんな経験をして衝撃を受けた」と話すはずなんです。

つまり、「これから」の話よりもむしろ、それと同じくらい「今まで」の自分に言及せざるを得ないはずなんです。でも、せいぜいクラスメイトに「お前留学行くんでしょ? 何してくるの?」と聞かれると、「カンボジアに学校を建ててくる」と計画を話すにとどまってしまう。

でも本当はその前に「なぜカンボジアなのか」「教えてくるじゃなくてなぜ学校を建てることにしたのか」「貧困は労働問題じゃなくて教育の問題なのだ」と思うに至る経験があったはずなんです。

でもそれを人に話すことが少ないので、自分の人生の今までのエピソードに思いを馳せないままで終わってしまうんですね。その深い理解・自覚がないと、自分がこれから何をするべきなのか、なんでこの道を選んだのかがわからなくなってしまうんじゃないかなと思うんです。

逆に、今までの自分のエピソードから考えてみると答えが見える時があるはずです。「弟がアトピーが大変で、自分は化学に関心がある」それなら、化学でアトピーに向き合うんじゃないですかということなんです。

その辺を人に話している内に、段々わかってくるはず。熱の入った話っていうのは、自分の過去の経験(そしてそこで生まれたモチベーション)が絶対に入っているということを。

自分の情熱を語ることへの照れ

ありますよね。でも、ここまで読んでくれた方はもうわかると思います。それでもやっぱり、語ることで自分の人生が整理されていくこと。自分の辛い経験も、今の原動力になっていること。

語ることは恥ずかしいことかもしれないけれど、応えてくれる人はきっと近くにいます。今回、このcaféのために九州から来てくれた方がいました。僕はそれがあんまりうれしくて、九州のトビタテ生Y君に頼んでこれからちょっと集まりでも作って彼の世界を広げ、夢を語って良い場所を作ってくれとお願いしました。

Y君は高校生に留学の素晴らしさや、夢を追うことが格好わるいことじゃないんだぜということを伝えている人です。いるんです、知らないだけでそういうY君みたいな人は。九州から来た彼は、そういう人と出会えずにずっとモヤモヤしていたようです。

この依頼を快諾してくれたY君も、彼自身がそんな人だった。ずっと、1人で戦ってきた人だからこそ、僕の言いたいことをすぐにわかってくれました。ありがとうY君。彼を頼みます。

そんなわけで、彼のように九州から飛び出してこのcaféに来るような人にはきっとチャンスが来ると思うんです。別にcaféじゃなくたって、何でもいいんです。一歩を踏み出すことが出来たら世界は開けます。

恥ずかしくても照れくさくてもいいから、誰かに語ったらその夢を手伝ってくれる人が現れるかもしれません。夢のある人、情熱のある人、そんな人達がトビタテにいっぱい受かってくれたらもっと楽しいコミュニティになるなあと思っています。僕自身も、そういう人を心から応援したいと思います。

なぜなら、Y君と同じように、僕自身がずっと孤独だったから。少しでも多くの人が、誰かに無理と言われたからって諦めなくてもよい世界になりますように。

物語理論の全てを、ワークショップのやり方も含めて書籍にしました。2017年4月29日発売です。是非ご一読くださいね。