たった1つの想いを語ろう:TEDトークから学ぶ留学計画の伝え方

たった1つの想いを語ろう:TEDトークから学ぶ留学計画の伝え方

研ぎすませた想いが人に刺さる。自分の想いを伝えたいなら幾つもアイディアを伝える必要はない。それは却って聞く人を混乱させるからだ。たった1つにまでメッセージを絞るからこそ人は耳を傾け共感する。

本連載について

この記事は「TEDトークから学ぶ、人に伝わる留学計画」という連載の中に位置します。留学計画に悩む人は往々にして「作り方」と「伝え方」のどちらかに困っていることが多いため、このような連載を開始致しました。

(ちなみに作る方は「留学計画を、物語のように作ろう」と題した連載を並行して行っています。是非御覧ください)

どんなに面白いジョークも伝え方を間違えると陳腐で退屈なものになります。ドラマチックな物語のような留学計画を作るだけではなく、それを人に面白く物語った時に初めて人の心を打つのです。スピーチも面接も自己紹介も書類を書くのも、内容だけではなく伝え方に気を遣わねば誰にも届かないものになってしまうのですから。

連載「TEDトークから学ぶ、人に伝わる留学計画」
vol.1たった1つの想いを語ろう:TEDトークから学ぶ留学計画の伝え方
vol.2まずパーソナルストーリーより始めよ:TEDトークから学ぶ留学計画の伝え方
vol.3.〈Whyが先、Howが後〉TEDから学ぶ、人に共感される話し方のゴールデンルール
vol.4応援したくなる留学計画の話し方には3つのパターンがある:TEDトークから学ぼう
vol.5TEDトークから学ぶ、人に伝わる話し方の「おしまい」でやってはいけないこと
vol.6.TEDトークでも重要視される「物語」の伝え方
vol.7.あなたは何者として語るのか? スピーチにおける自分の持つ役割の自覚
vol.8TEDトークが胸を打つのは「心からの情熱」を語るからだ

 

核となるアイディアを持つ

物語の作り方が「テーマ」から始まるように、物語の伝え方もまたアイディアから始まります。これはほとんど同じことだと言ってよいでしょう。要するに「言いたいことを一言でまとめると?」という質問に対する回答がテーマやアイディアです。

人に何かを伝えるとき、一度に多くのことを伝えても消化不良で終わることがほとんどです。あなたは話した内容によく親しんでいますが、初めて聞く人はあなたの一番伝えたいことの他にも色んなことを理解しながら聞くので精一杯で何が大事だったのかわからなくなってしまうのです。

(例えばマイナーな民族音楽を研究してくる! という人の留学計画は一般人が一度も聞いたことのない楽器の名前、それが使われる演劇の名前、その種類の様々な横文字に気を取られてしまいます)

長々と話すのではなく最初と最後に必ず一言で言えるコアなアイディア(テーマと言っても構いません)を持っておきましょう。このアイディアが話す内容の全ての中心にあり、これと繋がらない話は全て無駄です。

人に何かを伝える時に一番大事なことは「自分が何を伝えようとしているのか」に自覚的であることです。

良いアイディアとは何か

では、良いアイディアとはどのようなものでしょうか。様々なアイディアが考えられますが、基本的に聞いた人の「この世界の見方が変わるような」アイディアが望ましいでしょう。

知らなかったことを伝えたり、知っているつもりのことの裏や現実を伝えたり、そのために何か自分がしたいと思うようなキッカケになるアイディアを伝えるのです。

留学計画というのは
1.なぜやるのか(留学の目的)
2.何をやるのか(留学中の活動)
3.何を得られるのか(留学で得られる成果)
4.得たものはどう活用されるのか(社会や日本・世界への貢献)

から構成されています。これまで何か留学奨学金の書類を書いた人はピンと来ると思いますが、要するにそういう応募書類は単語や言い回しは違えど全てこれを聞いています。

良いアイディアとは、この4つに対する回答を1つで出来るようなものがベストだということです。これまで相談を受けてきた人たちの具体例を出して説明していきます。

アイディアの具体例

私はアメリカで価値観の多様性を体感してきます

非常によく聞く留学計画のアイディアの1つです。この他にも「北欧の進んだ教育を見に行く」「アフリカビジネスを立ち上げる」「アジアでボランティアをする」なども典型的な例として挙げられます。

これらのアイディアには「何をやるのか」ということ以外含まれていません(それにしても情報が薄弱ですが)。これだと色んな人が同じことを同じように考えていて、特に目新しくもなく驚きもありません。

日本人の自殺率の高さは「○○べき」という価値観と関わっています。人種の多様性が文化や価値観の多様性を生み出し「○○べき」が少ないアメリカでは自殺率が低いです。私はアメリカの○○大学で自殺を文化的な側面から捉える授業に参加し自殺相談窓口でインターンを行うことで、理論と現場をどちらも見てきた上で日本での応用を考え、高い自殺率を少しでも減らしたいと考えています。

このように説明を加えてみるとどうでしょう。「私はアメリカで価値観の多様性を体感してきます」よりも随分わかりやすくなったように思います。

《関連するデータ》
日本人の自殺率の高さは「○○べき」という価値観と関わっています。人種の多様性が文化や価値観の多様性を生み出し「○○べき」が少ないアメリカでは自殺率が低いです。

《留学内容》
私はアメリカの○○大学で自殺を文化的な側面から捉える授業に参加し自殺相談窓口でインターンを行うことで、

《得られること》
理論と現場をどちらも見てくる

《留学の目的/得たものの活用》
日本での応用を考え、高い自殺率を少しでも減らしたい

が含まれているからですね。しかし、これだと1つのアイディアと言うには少し長すぎるかもしれません。もちろん4つ全てに回答するのがベストですが、伝えるときにはよりシンプルに短くワンフレーズで伝えることが重要です。

そこで、以下のように伝えなおしてみましょう。

「日本のベキ論がたくさんの自殺者を生んでいる。アメリカの多様な文化=価値観が自殺率を下げているメカニズムを学びそれを日本で活かしたい」

更に短くする必要があるならば、以下のように伝えることも可能でしょう。

「ベキ論が人を殺す日本を、自殺者の少ない多様な価値観を持つ社会に変える」

1度膨らませた上で、より重要な部分を絞り込んでいくという作業も自分が言いたいことを整理するためにとても重要です。

アイディアを核にして広げていく

アイディア:ベキ論が人を殺す日本を、自殺者の少ない多様な価値観を持つ社会に変える

これが定まれば後はこれに関わることを話していけば良いのです。「なぜこのように思ったのか」「ベキ論とは何か」「多様な価値観を持つ社会とはどんなものか」「それはどのように作ることが出来るのか」「自分は具体的にどこで何を学ぶのか」といった話をします。

とにもかくにも最も重要なことは、このアイディアを自覚することです。自分が本当にやりたいことは何なのか、留学計画に悩んでいる人は大体ここがわかっていないことがほとんどなのです。

しかし、ここだけは誰かがアイディアを外から与えても何の意味もありません。自分自身が産みの苦しみを味わいながらたどり着く必要があります。そのためには自分の中で深掘りすることも重要ですし、人に自分の物語を伝えてツッコミやフィードバックを受けることも重要です。僕もオンラインで相談に乗っているので関心のある方は是非こちらからご連絡ください。

終わりに

留学計画は作るだけではなく、その伝え方にも注意する必要があります。素晴らしい物語を持っているのに、書類にうまく落とし込めなかったり面接でうまく話せなくて落ちてしまう人はたくさんいます。

是非今後の様々な募集に備えて本連載を追いかけてみてください。

また、物語のような留学計画の作り方、そして物語のような伝え方について1冊の書籍を2017年に中央経済社より出版しています。興味のある方は是非御覧ください。トビタテ生のリアルな物語も7本収録されています。

また、このような留学計画の作り方や語り方について1000名以上のカウンセリングをしてきました。オンラインでの個別相談を希望の方はぜひこちらよりご連絡ください。

連載「TEDトークから学ぶ、人に伝わる留学計画」
vol.1たった1つの想いを語ろう:TEDトークから学ぶ留学計画の伝え方
vol.2まずパーソナルストーリーより始めよ:TEDトークから学ぶ留学計画の伝え方
vol.3.〈Whyが先、Howが後〉TEDから学ぶ、人に共感される話し方のゴールデンルール
vol.4応援したくなる留学計画の話し方には3つのパターンがある:TEDトークから学ぼう
vol.5TEDトークから学ぶ、人に伝わる話し方の「おしまい」でやってはいけないこと
vol.6.TEDトークでも重要視される「物語」の伝え方
vol.7.あなたは何者として語るのか? スピーチにおける自分の持つ役割の自覚
vol.8TEDトークが胸を打つのは「心からの情熱」を語るからだ